区役所前を歩いていると、道端に変なランプが落ちていた。
興味本位で拾い上げると、中から気持ち悪い魔人的なやつが出て来た。
『『『ボワッ』』』
「うわぁ、何だこれ!」
『やぁどうも。僕はこのランプの中に住む魔人的なやつだ。さて、君はとてもラッキーだ。君は今日からこのランプをこする度に、100万円を手にする事が出来る。』
「はぁ?何だよいきなり。気持ち悪いなぁ。」
『そんなに褒めるなよ。まあ試してごらん、本当に貰えるから、100万円。ただしその代わり、失うものもあるけどね。』
「失うもの?何だよそれ」
『じゃあ、存分に楽しんでくれたまえ~...』
『『『ボワッ』』』
魔人的なやつは中に消えて、俺の手元にはランプだけが残った。
「あいつの言った事、本当なのかな」
ランプをこするだけで100万円。
失うものが何なのか気になるが、借金が300万円あった俺に、こすらない選択肢は無かった。
。
「「「シュッ」」」
俺は早速ランプをこすった。すると次の瞬間、俺の手は100万円の札束を握っていた。
「うわっ、いつの間に」
突然札束が現れて少し怖かったが、確かに100万円だ。やった。
俺が何を失ったのか気になるが、今のところ特に異変は無いようだ。
「まぁ少しくらい何かが無くなってもいいや。これで借金が返せるぜ。」
浮かれた俺は、さらに2回ランプをこすった。
俺の手元には300万円。俺は無事に借金を完済した。
「よし、これで借金が無くなったぜ。」
。
その後、心が楽になった俺は、前向きに生きられるようになった。
何かを失ったどころか、俺は以前よりも楽しい生活を手に入れていた。
「何だよ。失うどころか、得るものばかりじゃないか。きっと神さまが救ってくれたんだな。感謝して生きよう」
。
それから半年後。
俺はすっかりあのランプの事を忘れていた。
いつものように仕事を終えて、行きつけのラーメン屋に行った時のこと。
『いやぁ、いつも来てくれてありがとね』
「こちらこそです。ここのラーメン好きなんですよ」
店主はいつも来る俺の事を覚えてくれたようだ。
そして俺は大好物の醬油豚骨ラーメンを思いっきりすする。
...あれ?
何かおかしい。味が無い。
「店長、いつもより味薄くないですか?」
『え、本当? いつもと何も味変えてないけどなぁ』
「そ、そうですよね。僕の勘違いでしたすいません笑」
とは言ったものの、明らかにおかしい。味が無い。
その後数日間、何を食べても全く味を感じなかった。
。
仕事が休みの日に病院に行った。検査をしたがコロナではなかった。
あと舌も診てもらった。何の異常も無いようだ。
結局原因は分からないまま家に帰った。
あれこれ検索しても答えは見つからない。
悩んでいても仕方がない。いったん俺は考えるのをやめて気持ちを切り替える事にした。
「そういえば、最近全然してないな。とりあえず抜いとくか。」
俺は動画を観ながら自分の竿をしごいた。
そして数分後、イったのだが...何も出てこない。
...あれ?なんで?
竿の下におそるおそる触れてみる。そこにあるべきものが...無い。
俺はゾッとした。玉が...無い。
ここで俺はあのランプの事をふと思い出した。そして確信した。
味覚と◯玉...俺はきっとランプで得た100万円の代償に失ったのだ。
「失うものってそういう事かよ...じゃあ、あと1つは何だろう...」
俺は怖くなってきた。
もう俺は食事を楽しめないし、将来子供を作れない。
「嫌だ...もう何も...何も失いたくない...」
俺は部屋の隅に置きっぱなしで埃を被っているランプを手にとる。
「おい魔人的なやつ、頼む!頼むよ! やっぱ300万円は返すから...俺が失ったもの返してくれよ」
俺は半泣きでランプに話しかけた。すると...
『『『ボワッ』』』
中から魔人的なやつが出て来た。
『お久しぶり~。いやぁ返すのは無理っすよ~』
「頼むよ、俺が悪かった。俺が悪かったから。」
『君は何も悪くないさ。お金を得て借金を返し、普通の生活を手にしたんだから。立派だよ』
魔人的なやつは優しく俺に微笑んだ。
『さて、もう自覚しているようだが、君は2つのものを失った。あと1つなんだけどね』
「やめろ!やめろ!...返すから!100万円、返すから...」
『命』
「うっっっ!!!」 バタンッ...
。
『はい、お疲れさ~ん』
魔人的なやつはランプの中に戻り、ランプはまた区役所前の道端に戻っていった...
。
完
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