ある日俺は仕事帰りの19時頃、夜道を自転車で走っていた。
道路を曲がって路地に入ると、少し前を自転車の少女が走っていた。
少女は制服を着ておりおそらく高校生だ。
わりと少女は自転車を漕ぐスピードが速かった。
ただこのまま後ろを走っていた場合、周りから見たら俺は「夜道で女子高生の後をつけている男」だと思われそうな気がした。
だから追い抜こうと思った。
俺は立ち漕ぎでスピードを上げて女子高生を追い抜いた。
これで周りも女子高生自身も安心だろうなと勝手に思いながら、そのまま先を走っていた。
。
その後引き続き自転車を漕ぎながら、5分くらい経った頃。
まだもう少し家までかかりそうだなと思っていると、ふと後ろに誰かがいるような気配がした。
俺は何となく後ろを振り返ってみた。
するとそこには、、、、
さっきの女子高生がいた。すごい勢いで自転車を漕いでいる。
俺はビックリした。
さっき追い抜いた時から俺はほぼスピードを落としていないから、女子高生の脚力で5分ほどついてくるなんて相当疲れるだろうに。
今になって振り返れば、そこで俺が自転車を止めて「どうかされましたか?」くらい女子高生に聞けば良かったのかもしれないと思う。
しかしその時の俺は、疑問よりも恐怖の方が勝っていた。
後ろからすごい形相と勢いで自転車を漕ぎ追いかけてくる女子高生。
俺はすぐ前を向いてスピードを上げて全力で自転車を漕いだ。
。
そこからさらに1分後。後ろを振り返る。30mほど後ろをついてくる。
さらに1分後。20ⅿほど後ろ。
さらに1分後。10mほど後ろ。
何という事だ。俺の全力より女子高生の方が速い。
俺は怖くて足が取れそうになるくらい必死に自転車を漕いで何とか引き離そうとしていた。
するとその瞬間。
黒い影が後ろから近づいてきて、俺の右側を抜き去る。
そして俺の自転車のすぐ前方に横向きでざっと現れた。その女子高生だった。
女子高生は俺の目の前で、気味の悪い笑顔を浮かべた。
当然、俺は自転車で全力疾走しているから、すぐ止まれるはずがない。
俺はそのまま自転車の女子高生に衝突した。
自転車をその場に残し、俺の身体は吹っ飛び道路上で何度も叩き付けられ引きづられ。
何となく身体から湧き出る温かい液体の感触があった。
女子高生が無事かどうか確認しようにも、顔を動かせない。
そこで俺の記憶は止まった。
。
はっと目が覚めた。
俺は自分の部屋の布団の上にいた。
壁の時計を確認すると時刻は20時。
「あれ、、、俺はさっき事故を起こして、、、、」
おぼろげな記憶のまま身体を起こした俺は違和感に気づいた。
どこも痛くない。どこにも傷がついていない。
どういう事だ?
俺はさっき衝突してぐちゃぐちゃになったんじゃないのか、、、、
日付もさっきの事故と同じ。時間も約1時間しか経過していない。
夢であるはずはない。
同僚に電話で確認したが、
「何言ってんだよ、今日もいつも通り出勤してたぞ」
と言っていた。ちゃんとその日俺は仕事に行っていた。
ではあの女子高生は誰なのか。
その1時間で俺の身に起こった現象は何なのか。
未だに謎である。
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