ある会社で業務に追われる女の人がいた。
彼女はパソコン片手に階段を駆け上がっていた。
その時、つい足を滑らせてしまった。
パソコンが手から落ちかけ、自身は後ろに倒れかけた。
。
その瞬間。
ちょうど階段を降りながら彼女とすれ違っていた男性が、咄嗟に駆け寄った。
彼は右手で彼女の身体を支え、左手でパソコンをキャッチした。
「大丈夫ですか?」
「は、はい、大丈夫です!...すいません...」
彼女は彼の対応に驚きながら感謝した。
その後もしばらく、立ち去る男性の後ろ姿を呆然と眺めていた。
彼女は自分が助かった安堵感を抱いていた。
それに加え、彼の事をカッコイイと思って惚れかけていた。
。
あ、ヤバいヤバい。
ボーっとしてる場合じゃない。
彼女は我に返り、再び階段を上り始めた。
その時ふと手元のパソコン画面が目に入った。
彼女はエクセルを操作しながら移動していたのだが。
そのエクセル画面に、qaaqaqaqaaaaaaaaaaaqaqqqqaqqqqqqaqqqqqqqqqqqqaaaaaaaaaaaqqqaqaqaqqq
という表示が出ていた。
何これ?と思ったが、すぐに理解した。
先ほど咄嗟に助けてくれた男性が、左手でパソコンをキャッチした際に、親指がQキーとAキーを押していたのだ。
もちろんそれは仕方のないことなのだが。
それを見た彼女は、さっきカッコイイと思っていた気持ちが、急速に冷めてしまったのだという。
。
俺はそんな話を人から聞いた。
その短時間での女性の気持ちの変化の振り幅の大きさに、恐怖を覚えた。
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