幼い頃から、私の身体には少し変なところがある。
今までそれは私にとって大きなコンプレックスだった。
でもつい最近、初めてそれが役に立った。
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初めて自分の身体の異変に気づいたのは幼稚園児の頃。
皆で走り回って遊んでいた時、ふざけて後ろから抱きついてきた子がいた。
お腹を押された私は、ついおならをしてしまった。
すると次の瞬間、その子が後ろに倒れて泣いていた。
私には何が起きたのか分からなかった。
家に帰った後、母親に、
『パンツ破れてるじゃない、何があったの?』
と言われて、初めて私は、もしかしたら自分のおならの勢いは強いのかも、と思った。
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その後、私は家で何度かわざとおならをしてみた。
風呂ですると大きな泡が生まれ、消えると同時に浴槽からお湯が溢れた。
いらなくなったパンツとズボンを履いて思いきり力んだら、どちらも破れた。
間違いない、私のおならの勢いは異常だ、とはっきり分かった。
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幼稚園児の頃は面白がって遊んでいたが、小学生になる頃には次第に恥じらいが出てきた。
そして家でも学校でもおならを我慢するようになった。
そんなある日、一番恥ずかしい出来事が起きた。
小学校の全校集会のときである。
体育座りをして校長の話を聞いているとき、私はおならがしたくなった。
何とか我慢していたが、遂に耐えられなくなった。
おならをした瞬間、爆音と同時に、私の身体は1mほど飛び上がった。
爆笑する皆、顔を真っ赤にして下を向く私。
それ以降私にとっておならの勢いは、より大きなコンプレックスとなった。
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それから十数年後。私は今社会人である。
会社に通勤するために満員電車に乗っていた私。
すると途中から、何だかお尻に変な感触があるなと思った。
間違いない、誰かにさすられている。痴漢だ。
その後しばらく様子を見たが、ずっと触ってきている。
「仕方ない...あれを解禁するしか...」
私はそこで、あれ以来、十数年間封印してきた伝家の宝刀を使う事にした。
「「「ブッ!!!」」」
爆音が電車内に響き渡る。
『うわぁぁぁ~~~っっっ』
命中したようだ。痴漢男が倒れてもがいている。
手首から血を流して。
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私は小学生の頃にある事に気づいていた。
おならの勢いは、年齢とともに強くなっていくと。
恥ずかしかった私は、確かに二度と人前でおならをしないと決めていた。
しかし、もし自分に危機が迫ったら、その時だけは解禁するとも決めていた。
きっとその頃には今よりもっと強くなっているはずだから...
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痴漢男は手首から血を流している。
私のおならの勢いが強すぎて、彼の手だけ吹っ飛ばしてしまったらしい。
右手を失った彼を横目に私は、自分のお尻が丸出しである事など気にもせず、電車を降りた。
。
完
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